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2. 地震防災情報システム(DIS)

国土庁防災局 震災対策課
課長補佐 桐 山 孝 晴

1. はじめに

 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災においては,発災時における防災関係機関の応急対策活動の速やかな立ち上がりの重要性,特に被害状況を早期に把握することの重要性が指摘された。これを契機として「情報の重要性」が再認識され,いかに情報を効率よく,収集,整理,分析することができるかが課題となった。
 災害時における情報の特性としては,被災地が面的な広がりを持ち,かつ時々刻々と状況が変化していくこと,防災関係機関が情報を共有化する必要があること等が挙げられる。これらの特性を考慮すると,災害時における情報の処理には地理情報システム(GIS)を使用するとともに,防災関係機関がネットワーク化された共通のシステムを持つことが効果的であると考えられる。
 このような状況の下で,国土庁では政府の災害対応を支援するためのシステムとして,GISを活用して各種の情報処理を行うことができる地震防災情報システム(DIS)の整備を進めている。DISは,発災に先立つ事前の備えから復旧・復興に至るまでのトータルシステムとしての構築を目指しているが,現在,最優先で整備を行っているのは災害発生直後の初動対応および応急対策活動に関する部分である。
 以下では,これらの活動を支援するサブシステムである地震被害早期評価システム(EES)および応急対策支援システム(EMS)について述べる。


2. 地震被害早期評価システム(EES)

2ー1 EESの概要
 地震被害早期評価システム(EES)は,地震発生直後の情報が限られた状況下で,被害規模の概要を短時間で推計するものであり,応急対策等に関する意思決定を行おうとする際に,迅速かつ的確な判断に資するための情報提供を行うことを目的としている。
 日本では,地震と被害の状況について過去の記録が残されており,各地域における地震の規模と被害の状況との関係を整理することができる。これに近年新しく得られた解析手法を用いて,地震による建築物被害およびそれに起因する人的被害の被害想定を行うことが可能である。
 EESでは,このようなノウハウを活用した推計手法を備えており,データベースとして,地形,地盤,建築物,人口等について日本全国で整備したうえで,気象庁や地方自治体が全国を網羅して約2300箇所に設置した地震計の測定データをリアルタイムに受信し,その計測震度を用いて推計するのが特徴である。EESは,気象庁に集約された震度データ(観測点計測震度)がオンラインで利用できるようになっており,震度4以上が観測されると自動的に起動し,メッシュ(約1km四方)震度分布の推計と,建築物被害およびそれに起因する人的被害の推計を行う。(図ー1)
 大規模な地震が発生した際には,EESの推計結果は,政府の緊急参集チームの会議において,災害対策本部の設置の有無,応急対策活動の準備等,政府の初動対応の検討に利用される。

図ー1 地震被害推計の流れ 

2ー2 EESの運用実績
 EESは平成8年4月から運用を開始しており,平成11年9月末までに震度4以上が観測された110回の地震において稼働している。そのうち震度6弱が2回,震度5強が4回含まれている。
 この期間における最大の地震は,平成9年5月13日の鹿児島県薩摩地方で起きた地震(図ー2左)であり,最大震度6弱を記録し,倒壊家屋約800棟,それに伴う死者100人未満(15人)という推計結果を得た。これは全半壊77棟,重傷1人という実際の被害よりも大きかったものの,この3年間で最大の被害を出した地震災害のおおまかな規模を表現している。
 また,同じく震度6弱を記録した平成10年9月3日の岩手県内陸北部の地震(図ー2右)においては,倒壊家屋100棟未満(11棟),死者0人という推計結果であり,このときは実際の被害(0棟,0人)とほぼ同等であった。

図ー2 推計震度分布の例

2ー3 EESの機能拡充
 EESは,既に運用状態に入っているが,さらなる機能拡充も行っている。
 まず,平成9年9月からは,重傷者,重篤患者や避難者数等,推計項目を充実することにより,関係機関の応急対策活動の準備のための情報としても活用している。このうち,重篤患者数については,後述する広域医療搬送活動アクションプランで重要な意味を持つことになっている。
 また,EESの推計結果をEMSへの速報情報としての活用も行うことができるようにしている。これによって,震度分布をラスター地図に重ね合わせて市街地の分布との関係を見たり,震度が一定以上(または以下)のメッシュ内に存在する防災関連施設の抽出を行うことができる。
 さらに,気象庁の新しい津波予報が平成11年度から運用開始されたことを受け,EESに津波浸水の早期評価機能を付加した。これは,日本全国の海岸について構築した津波浸水予測データベース(ある海岸にある高さの津波が来襲した場合の浸水域および浸水深さを予測したもの)を活用して,津波予報に示された予報区,津波高さの情報から該当するデータを検索して画面上に表示するものである。これによって,津波についても地震発生直後にその浸水の状況を概ね把握することができる。


3. 応急対策支援システム(EMS)

3ー1 EMSの概要
 応急対策支援システム(EMS)は,あらかじめ整備しておく防災関連施設等のデータベースと,地震発生後に収集する被害情報や各種応急対策の準備や実施の状況について,関係省庁から提供される情報をGIS上で整理して共有する仕組みを確立し,政府の災害対策本部の応急対策活動を支援することを目的としている。
 EMSは全国の1/25,000地図をベースとし,公共土木施設(道路,鉄道,港湾,飛行場,ヘリポート等)や防災関連施設(行政機関,警察署,消防署,自衛隊,病院等)の情報をデータベースとして整備している。さらに,地震の切迫性が強くかつ人口や各種都市機能の集積が高い南関東地域においては,1/2,500の詳細地図および避難施設,備蓄場所等,地域防災計画に基づく防災関連施設のデータベースを整備している。
3ー2 ネットワークの構築
 関係省庁にDISの端末(クライアント)を設置し,国土庁にあるDISサーバとのオンラインのネットワークを構築することにより,関係省庁間でデータベースの共有や情報交換ができるようになる。関係省庁は,自らが報告すべき情報を端末から入力するとともに,他省庁が報告した情報や地図,データベース等を引き出して閲覧することができる。通信方法は,災害時の安全性を十分に考慮して,関係省庁等を結んで整備している中央防災無線網を活用することとしている。(図ー3)
 DISの端末は,平成10年度に首相官邸と消防庁に設置したのを皮切りとして,数年以内に関係省庁間のネットワーク化を完成させる予定である。関係省庁間のネットワーク化が完成すれば,EMSを本格的に稼働させることが可能となる。

図ー3 DISのネットワーク化全体イメージ 

3ー3 EMSのアプリケーション
 地震発災直後の応急対策として重要となる各種対策活動について,収集された情報や知見を集約し,計画立案を支援するアプリケーション群の整備を進めている。アプリケーションの整備にあたっては,現在,関係省庁間で検討が進められている実践的な備え(アクションプラン)に対応した機能を付加することとしている。
 平成10年8月には,アクションプランの第1号として「南関東地域の大規模震災時における広域医療搬送活動」に関する第1次の申し合わせが行われた。ここでは,EESによる重篤患者数の推計結果に基づき,医療機関の受入に関する考え方を3パターン設定すること等が盛り込まれている。このアクションプランに対応して,医療・搬送アプリケーションの開発を行い,平成11年9月より運用している。
 医療・搬送アプリケーションは,南関東地域で重篤患者が発生するというEESの推計結果が得られた場合に自動的に起動し,地域別の重篤患者数と受入可能数から,搬送ルート(起点,終点,人数等)のシミュレーション(仮想計画)を行い,初動対応の参考とする。応急対策期には,現地から入手した搬送要請,受入申請,広域搬送拠点の開設,搬送手段の確保等の情報を地域別に入力すると,搬送のための条件が整ったルートから順に自動的に地図上に表示される。また,実際に搬送が行われた記録を保存しておくこともできる。(図ー4)

図ー4 医療・搬送アプリケーションのイメージ 

4. 今後の課題

 DISは,今後もデータベースやアプリケーションを充実させ,より使いやすいシステムとなるよう整備していく予定である。近い将来,EMSが本格稼働するようになれば,関係省庁間の情報の共有化が促進され,より効率的な応急対策活動が可能になるものと期待される。
 今後とも,関係機関との連携を強めつつDISの整備を推進し,災害時の対応がより一層改善されるようつとめていきたい。



No.58(1999.秋号)
災害対応力と危機管理
1. リアルタイム地震防災システムとは
2. 地震防災情報システム(DIS)
3. 災害対応総合情報ネットワークシステム(フェニックス防災システム)について
4. 横浜市リアルタイム地震防災システム
5. 東京ガスのリアルタイム防災システムの現状と今後の展望
火災原因調査シリーズ(15)動物が原因で出火した火災事例について
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