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■豪雨災害対策のための図上訓練・危機管理システム

(財)消防科学総合センター 研究開発部長   日 野 宗 門

(株)宮崎情報処理センター ソフトウェア研究所   大 渕 達 雄

1.豪雨時に求められる危機管理能力

  平成16年は、台風の上陸数が平年の4倍近い過去最多の10個に及ぶなど、「気象庁始まって以来」という言葉を何度か耳にする豪雨災害多発の1年となりました。図ー1は、市町村や消防本部が、気象データなどから豪雨災害の危険度を監視して必要な情報を住民に伝える段階から、安全な避難に到るまでの過程を示したものです。
  【意思決定過程】では、豪雨情報の収集を通じて管内の状況を理解し、住民への避難の勧告や指示等を判断します。豪雨時の危機管理においてはこの段階が最も重要ですが、適切な意思決定が行なえないことが往々にして発生します。
  【伝達過程】では、避難の勧告等を住民に伝えます。戸別受信機の配備がむずかしく広報車や屋外同報無線に頼る地域では、避難勧告等の不達・遅延・聴取不能により避難のタイミングを失するケースがしばしば見られます。
  【受容過程】は、行政側から発せられた避難勧告等を受け取った住民の反応過程です。受け取った情報を正しく理解して適切な避難行動等を取ることが求められますが、無視や拒絶といった問題が度々発生しています。
  突発的な地震災害と違い、豪雨時には【意思決定過程】に比較的長時間の警戒期があり、災害発生前に入手できる情報も多いのですが、それでも、必要情報の不足や遅延、混乱が生じます。そういった状況下にあっても、「今何が起こっているか」を理解し、「今後何が起こり得るか」を予測しながら先手々々の対応を打つことが「危機管理」の本質です。
  現在は、情報収集手段が進歩し、活動マニュアルも整備され始めていますが、大規模な豪雨災害時には「思いもよらない」事態が発生して、マニュアルどおりには対応できない場面が多発します。そのような状況下では、組織や個々の職員に臨機応変に対応できるだけの危機管理能力が必要とされます。しかしながら、ひとつの市町村や消防本部をとれば、大規模な豪雨災害を経験することはまれであるため、経験に基づく能力の向上は期待できません。そういった背景から、できるだけ実際の豪雨災害事例を数多く擬似体験することにより実践的な意思決定・判断能力を養成する図上訓練の重要さが認められ、各所で実践される機会が増えています。
  本稿では、豪雨災害対策のための図上訓練用に国内で初めて開発されたシステムの主な機能とその実践例のほか、単に図上訓練に用いるだけでなく、実際の雨のシーズンに首長や防災担当者の意思決定を強力に支援する「危機管理支援機能」をあわせてご紹介します。

図ー1 豪雨時の警戒避難活動の過程

2.豪雨災害対策のための図上訓練ー消防大学校の実践例からー

  本システムの図上訓練機能は、図ー2に示す3過程から構成されます。
  【準備】では、気象データや災害記録を基礎資料にして、訓練参加者に提示(付与)する各種の情報の他、評価・検証時に用いる情報を登録します。
  【実施】では、【準備】で設定された情報のうち、「豪雨時に通常得られる情報」を次々に、任意の倍率で再現表示させながら、「どの時点で、何をポイントに、どう意思決定をしますか」を参加者に問い、参加者はその意思決定の内容・理由などを入力または記入します。
  【評価・検証】では、「豪雨時に通常得られる情報」の上に、「事後に分かる情報」(災害対策本部の設置時期や、現地調査で始めて判明する発災時刻と状況等)を重ね合せます。さらに、災害教訓に基づく評価ポイントを要所々々に表示させながら、参加者の意思決定の時期と判断の適切さを検証する他、参加者からの問題提起や討議を通じて、防災活動上の課題を明らかにして行きます。
  今年度、消防大学校の本科(6月)と幹部研修科(11月)では、本システムを用いた図上訓練を行いました。図ー3は評価・検証時に表示した画面の一部です。
  例えば62番のイベント(事案)は、がけ崩れによるガス漏れを消防に処置して欲しいとした通報者が、通信指令員の「対応できない」という返事に憤慨する場面です。そして、この事案に対する評価・検証のポイントを示したのが313番です。
  災害時に、「自分の周辺が最も被害がひどい」という見方をしがちになることを「中心化傾向」と呼びます。こういう傾向に陥った住民からの不要不急の通報により、本当に重要な情報の通報が阻害される恐れが生じます。そのような事態を回避するためには、報道機関に対する放送要請等を通じて管内全体の異常な状況を伝えることが必要になります。313番の評価・検証のポイントは、このような対応上の要点に気づかせるために用意されたものです。

図ー2 図上訓練進行の3過程と情報の流れ

図ー3「豪雨災害対策のための図上訓練・危機管理システム」
の評価・検証画面

3.危機管理支援機能の活用方法

  「図上訓練」は、平常時に危機管理能力の向上を図る研修方法として用いますが、「危機管理支援機能」は、降雨の最中にリアルタイムの観測データをシステムに読み込み、「今現在」の危険度を判断・予測しながら、次に取るべき体制・活動の意思決定を支援します。その中心となるのが図ー4の「危機管理テーブル」です。
  豪雨災害後には「河川には注意していたが、何十年も実害のなかった土砂災害には頭が回らなかった」という言葉をよく耳にします。「川が危ない時は、山も危ない」という豪雨災害対策の基本を表現しているのが危機管理テーブルの左右にある「土砂」と「河川」の危険度レベルで、「同等の警戒避難活動を必要とする事態=同等の危険度」を基準にした対応表になっています。レベルの設定・判定には、国土技術政策総合研究所を始めとする各研究機関の技術資料や、水文観測・流出解析等の各種の調査結果を総合的に用います。
  危機管理テーブルによって、危険度レベルに応じた活動・配備体制及び活動内容が指示されます。そのことにより、防災担当者の過度な個人的負担を減じ、「様子見」の心理に起因する「後追い的な対応」が追放されることになります。

図ー4 危機管理テーブル

  今回ご紹介した「豪雨災害対策のための図上訓練・危機管理システム」は、総務省消防庁の「平成15年度消防防災科学技術研究推進制度」の適用を受けて共同開発されました。
  詳しい情報をお知りになりたい場合は、以下の問合せ先までご連絡ください。
 問合せ先:(財)消防科学総合センター 研究開発部 担当:日野
        〒181-0005 三鷹市中原3ー14ー1 TEL 0422-49-1113
        (株)宮崎情報処理センター ソフトウェア研究所 担当:大渕
        〒889-2155 宮崎市学園木花台西2ー2ー1
               TEL 0985-58-5225
  紹介サイト:消防防災博物館
                 (http://www.bousaihaku.com/)
       マーケット情報館 ⇒ デモンストレーション出展ゾーン



No.79(2005.冬号)
「災」の年を越えて
1.阪神・淡路大震災の教訓とその後の消防庁の対策
2.震災10年
3.都市防災の将来・・・次に備える大切な4つの視点
4.防災まちづくりの将来展望 〜市民と協働する防災まちづくりの実践をめざす〜
5.最近10年の活断層調査
6.地震時における同時多発火災の問題と消防に期待される役割-今そこにある危機に対してどう立ち向かっていくか-
7.地震災害と情報
8.自主防災の課題と展望
9.災害弱者をまもる安全・安心な社会とは
10.阪神大震災から学校の防災訓練を考える
11.人と防災未来センターと国際防災への取り組み
■豪雨災害対策のための図上訓練・危機管理システム
地域防災実戦ノウハウ(42)
火災原因調査シリーズ(35)-建物ぼや火災-「防炎物品からの出火事例」
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