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7.新型インフルエンザに対する京都府の取り組み

京都府危機管理・防災課 石 山   哲

 夏の終わりから拡大を続けてきた新型インフルエンザの流行は、平成21年12月25日時点で、全国的にも、京都府内でも、一旦、峠を越えたように見えるが、今後、この新型インフルエンザが、季節性インフルエンザの流行と相まって、どのような推移をたどるのか予断を許さない状況にある。
 今回の新型インフルエンザについて、これまでの京都府の危機管理部門における取り組みを中心に振り返るとともに、発生以前の取り組みについてご紹介させていただくこととする。

1.発生以降の取り組みについて

発生後迅速に事務局体制を構築
 平成21年4月24日(金)夜、メキシコで豚インフルエンザに人が感染しているとの情報が厚生労働省からもたらされた。
 新型インフルエンザ対策について京都府では、平成20年から危機管理監を中心として全庁的な取り組みを強化・本格化させ、11月に図上訓練や事業者向けの講演会を実施するとともに、21年3月には暫定版ではあったが社会対応版マニュアルを策定していた。
 また、2月に抜本改定された国の新型インフルエンザ行動計画に準拠して、府の計画を全面改定し、「京都府新型インフルエンザ対策計画」として、4月20日に公表したばかりであった。
 府では、このインフルエンザ発生の情報を受け、土曜日(25日)には情報収集体制を組むとともに、相談窓口を健康対策課に設置。翌日曜日には、全部局を緊急参集させ、新型インフルエンザ対策推進会議を開催し、情報共有や当面の対応を協議した。
 28日、WHOのフェーズ4宣言を受け、対策計画どおり京都府新型インフルエンザ対策本部を直ちに設置し、危機管理センターに本部会議室及び本部事務局の執務スペースを設けた。危機管理センターといっても、普段は会議室として利用している部屋で、緊急時には事務局用パソコンや通信機器など必要な機材を持ち込む必要がある。前年度に必要な電源コンセント、電話回線、LAN回線などを整備したところであった。
 本部事務局の体制として、総括班、対策班、情報班、広報班を置いた。事務局長は危機管理監、事務局員は危機管理部局と健康福祉部、広報課及び全庁的な応援職員によって構成するとともに、保健所の発熱相談とは別に、各種の相談を本庁で一括して対応する24時間体制の総合コールセンターを府民生活部を中心に設置し、概ね20名の人員で構成した。
 事務局は、主に全庁対応・社会対応を担い、医療・公衆衛生対応を行う健康福祉部と棲み分け、本部会議など各種会議の運営、情報の収集・整理、庁内・関係機関との情報共有、広報、各部局の対策等の調整を行った。

知事が陣頭指揮で対策
 発生当初、今回の新型インフルエンザの病原性や感染性について十分な情報もなく、今後、この新型インフルエンザが社会的なものも含めどのような深刻な被害を与えるかも不明であった。
 さらに、厳しい検疫や患者の入院措置などH5N1を想定した対応を国はとっており、連日のように新型インフルエンザについて報道される中、府民の不安も高まっていた。
 こうしたことから、4月末からの1か月程度は、知事が先頭に立って対策にあたり、知事を本部長とする本部会議を11回開催し、府民の安心・安全を確保するため、知事からの呼びかけをはじめ様々な対策を矢継ぎ早に行った。
 また、本部会議は全て記者やテレビカメラが入る中で開催した。これは、危機発生時こそ透明性の確保が重要であるとの知事の強い思いからによるもので、京都府では、5年前に発生した鳥インフルエンザ以来、台風23号災害など様々な対策会議を報道機関に全て公開している。

計画の見直しと事務局・相談体制の再構築
 6月19日、国の運用指針の見直しが行われ、患者は原則自宅療養とするなど、対応方針が大きく変更された。閉庁日にも開設していた事務局についても、流行が一旦落ち着いた6月1日以降、体制を順次縮小し、26日には他部局からの応援をとりやめた。
 一方、秋以降に本格的な流行やウイルスが変異する可能性も指摘されており、大流行に備えた体制を確保するため、外部の専門家の参加を得てこれまでの対応に係る検証会議を開催し、課題整理を行った。
 4月から使っていた対策計画や新型インフルエンザ社会対応版マニュアルは、強毒性の新型インフルエンザを想定したものであり、今回の実情に合っていなかったことから、9月中に弱毒型の対応等も盛り込んだ計画・マニュアルに改定した。
 また、業務継続計画(BCP)の策定を急ぎ、「京都府業務継続基本指針」(指針)を9月末に策定した。
 BCPについては、平成19年度から庁内研究会において検討していたもので、19年度には業務継続にあたってのボトルネックとなる執務環境や執務体制についての検討を済ませ、20年度には「危機事象を問わず業務継続の基本的な考え方を示す指針を策定する」という方向付けを行い、21年度には、地震を想定したBCPを策定することとしていた。
 しかし、平成21年4月に新型インフルエンザが発生したことから、方針を転換し、新型インフルエンザを想定したBCPを先行して策定することにしたものである。具体的には、5月初め、4割の職員が休んだ場合であっても継続すべき重要業務について各部局で洗い出し作業を行った。これをもとに、7月以降、通常業務の仕分けを行い、「新型インフルエンザ部局別マニュアル」に盛り込んだ。京都府の新型インフルエンザに関するBCPは「指針」「社会対応版マニュアル」「部局別マニュアル」により構成されることとなる。
 10月1日からは、流行の拡大に備え、これまでの情報提供機能を強化し、電話相談業務と一体となったインフォメーションセンターを設置し、民間に委託して電話相談を行うとともに、常設の事務局体制を復活させた。
 新たな事務局は、危機管理・防災課の隣室に置き、危機管理・防災課職員、健康福祉部職員と全庁応援職員で構成している。また、電話相談のオペレーターと事務局が机を並べることにより、困難な相談事案にその場で対応するほか、日々寄せられる電話相談内容を広報に生かすなど、より積極的な情報提供を行っている。

図 京都府の危機管理に関する計画等の体系

2.発生以前の取り組みについて

SARSと鳥インフルエンザの経験を生かして
 さて、今回の新型インフルエンザの対応に当たっては、これまでに京都府が経験した2つの事案の教訓が活きている。
 一つ目は、平成15年5月、SARSサーズ(重症呼吸器症候群)に罹患した台湾人医師が関西空港から来日し、関西を周遊した事案である。国内初のSARS事案であり、マスコミの関心も高く、当該患者の立ち寄り先などの情報の公開、国との連絡、事後の消毒など様々な課題が明らかとなった。
 二つ目は、平成16年2月に発生した大規模な鳥インフルエンザ事案である。約24万羽もの大量の鳥の殺処分と埋却、車両の消毒など、府職員をはじめ市町村や自衛隊、さらには近隣府県の応援等大量の人員を投入するなど全国でも例のない事案であり、半径30劼旅範囲での鶏卵等の移動制限など、地域の養鶏農家に深刻な被害が発生するとともに、京都産の農作物への風評被害など、きわめて影響の大きかった事案である。
 この2つの事案を通じて、京都府では危機管理に当たり、現地・現場主義、情報公開の徹底、国・市町村との連携、第三者による検証の必要性などを強く意識することとなった。
 こうしたことから、対策本部会議のマスコミへの全面公開をはじめ、全庁的な視点に立って対策に取り組む危機管理の責任者である「危機管理監」の設置など危機管理体制の強化、さらには、府の地域機関である広域振興局の強化、鳥インフルエンザや新型インフルエンザに係る専門家会議の設置、防災対策における京都大学防災研究所との連携強化などを行った。

昨年から加速していた新型インフルエンザへの備え
 新型インフルエンザ対策については、平成17年に府の行動計画を策定するなど健康福祉部を中心に取り組んできたが、新型インフルエンザの社会全体に対する被害の大きさが明らかになる中、府庁全体で取り組むべきとの認識が強くなってきた。
 平成20年2月、新型インフルエンザ対策推進会議の座長である危機管理監の下に「庁内研究会」を設置し、庁内の業務継続、社会機能維持、法制度の課題等についての検討を開始した。具体的には、平成20年秋に図上訓練を実施するとの目標を定め、先行府県等の取り組みも参考にしながら、社会対応版マニュアルの作成を庁内各部局と進めていった。
 同年11月の図上訓練では、海外発生期から大流行期の一連の流れを想定し、各部局での事前シミュレーション訓練、本部会議訓練、事務局運用訓練を組み合わせたものとし、厚生労働省や大学の専門家によるアドバイスも得ながら、この訓練により明らかになった課題をもとに、平成21年3月までに暫定版ではあるものの社会対応版マニュアルの見直しを終えた。
 また、行政とマスコミ関係者が参加して、「府民への緊急情報伝達研究会」を平成19年8月から開催している。これは、地震やゲリラ豪雨など様々なテーマで、ゲストスピーカーの講演の後、意見交換をしているものであるが、20年12月には、新型インフルエンザをテーマに開催した。訓練から1か月後の開催でもあり、マスコミ各社や市町村など参加者の関心も高く、新型インフルエンザに対する理解が一気に進んだことや、患者が見つかった場合の公表のあり方等について、具体的な意見交換ができた。
 平成21年9月にもこの勉強会において、今回の新型インフルエンザの対応に係るリスクコミュニケーションのあり方を検討するなど、新型インフルエンザをテーマとして継続して取り組んでおり、参加者の関心も高い。
 京都府においては、今回の新型インフルエンザの発生にあたって、経験や備えを生かして迅速に初動対応できたのではないかと考えている。



NO.99 (2010.冬号)
巻頭随想 死をめぐって・・・病院外心停止と救急のニーズ
1.新型インフルエンザ(パンデミックH1N1 2009)の現状
2.新型インフルエンザとは何か
3.消防機関における新型インフルエンザ対策
4.報道の立場から見た新型(豚)インフルエンザ騒動
5.茨城県における新型インフルエンザへの対応
6.新型インフルエンザに対する救急活動の取り組み
7.新型インフルエンザに対する京都府の取り組み
8.神戸市における新型インフルエンザの対策ーこれまでの対応を振り返った今後の対策ー
防犯まちづくりから消防への示唆
火災・事故防止に資する防災情報データベースについて
連載講座 連載第6回 つらい仕事もチームで楽しくー木下藤吉郎ー
地域防災実戦ノウハウ(62)
火災原因調査シリーズ(55)・倉庫火災
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